フランスのバカンス制度を考える。田舎の小さな飲食店が長期休暇へ挑戦!

フレンチに憧れ、この世界に入ってから「日本ではなかなか真似できないよな〜」と思ったものがあります。

それはフランス本国で施行される長期休暇であるバカンス。

今から35年前、バックパッカーとしてヨーロッパをひとり旅をしながらミシュランの星のつくレストランを食べ歩いたあのときに感じた、日本とは違和感を感じる現地の人の生き方。

そう、まさに「生きる」という考え方が全く違うことに気付かされました。

私自身、昭和に生まれ育ちそしてこの料理の世界に入った身として、昔ながらの徒弟制度は至極当然のものでした。

ある時は殴られたり蹴られたりしながら修行をし、毎日悔しい思いを。。。。。(泣)

ある意味、仕事を一つでも、そして早く覚えて料理の幅やキャリアを積むことが一つのゴールでした。

そのために仕事を頑張る。

ところがフランスの現地へ行くと「人生を楽しむこと」が彼らにとってのゴールなのでした。

うまく説明できないのですが「ゆる〜く頑張る」といった感じでしょうか……。

あるチャンスがあり、修行先の札幌のホテルから東京のフレンチレストランへの門が開かれました。

その転職までの間、約半年ほど時間に空きがあったものですから「これは本場の料理を食べなきゃ!」ということで飛び乗ったのが大韓航空機。

当時、ヨーロッパ往復12万円という格安ではありましたが南回り航路(今はそんな航路ありません)で、28時間ほど飛行機に乗らなきゃならない。

飛行機で行けども行けども闇の中。

加えてぎゅうぎゅうのエコにミークラスに揺られて28時間。

今ではちょっと無理かな〜。

ヨーロッパでは数名の先輩たちが修行をされていたので、住んでいるアパートにスーツケースを預かって頂き、リュックを背負ってヒッチハイクと夜汽車を乗り継ぎ、各地を転々と食べまわったものでした。

ところが行きたい店はあるものの、何軒かは「バカンス」の貼り紙がされている。

「バカンス???」

そこで20代にして初めてバカンスという言葉を知った次第でした。

このバカンス。

フランスでは有給休暇が法律で保証されており、1年間で30日の有給休暇を取得できる制度です。

労働者は5月1日~10月31日の「法定期間」の間に、メイン休暇として一定日数(2週間~4週間)の休暇を一度に連続して取得しなければなりません。

フランスを始めヨロッパではほとんどの国々がこの制度を取り入れております。

現地の先輩たちに聞くとバカンスが近づいてくるとレストラン内のスタッフも徐々にテンション爆上がり。

長期休暇の前までに効率的に仕事を終わらせるとか。

そりゃそうですよ。

人間の心理ですもんね。

バカンス期間中は普段できないようなアクティビティーにチャレンジしたり、家族や恋人と隣国に旅行に行ったりと休暇を満喫するそうな。

それがあるからフランス人は仕事を頑張れるって、先輩から聞かされたものでした。

それでいて世界第3位のGDP(国内総生産)も、一人あたりにするとフランスよりも日本は下。

いかに日本が生産効率悪いかってことが言えますよね。
(もちろん物価、メニュー単価やチップ制など他にも要因がありますが、、、、、)

そんなことを若かりしの自分の胸に秘め、自分が父の跡を継いだ時にこの「バカンス制度」を取り入れよう!と心に決めたのでした。

それからというもの、ゆたかの社長となった自分自身にいつも問いており、取り入れるタイミングを伺っておりました。

そりゃ親心としては縁ある社員さんたちに長期休暇を始め福利厚生を充実させたいって思いますよ。

いやいや、私に限らず世の社長さんたちは皆考えていらっしゃると思います。

しかし現実は難しい..........。

バカンス休暇なんて。。。。。。。

だってそうでしょ、、、、、、

スタッフを交代交代で長期休暇なんかをして頂くと会社が回らない。。。。

その分の代替えの社員を雇い、人手を増やすと固定費を圧迫。。。

かといってその期間、お店を全休にすると「売上」という源泉が絶たれ、各種の支払いや銀行返済、給与の支払いに困るわけで。。。。。

そんなことで「理想と現実」の間で揺れ動いておりました。

ただ、私もあと数年でで還暦。

ちゃんちゃんこを着る歳が視野に入ってまいりました。

そこで…。

「このまま人生を終えていいのか?」

「このまま社長を終えていいのか?」っていうことにいつも自問自答しておりました。

つまりは若かりし頃であれ、今思ったことであれ、

「やってみたい!」「やろう!」と思ったことにチャレンジせずして終わっていいのかってことを。

このコロナをピンチではなく、チャンスと捉えると、ある意味絶好のチャレンジタイムかな? とも思うわけです。

………考えてみてください。

このコロナで世の中のお客様の流れがガラッと変わり、今までのビジネスモデルではなかなか難しい時代に突入したと感じています。

飲食業なんてまさにそうであります。

コロナでさっとお客様がいなくなり、家飲みという文化が根付き、外食しなくてもお惣菜が充実。

冷食のクオリティーも一気に上がって、通販では美味しいものが手軽に届く。

そして、コロナが戻りつつあろうかという時に、どの業種も「人手不足」。

特にサービス業や介護事業は深刻です。

つまりは私が生まれ育った昭和型の飲食ビジネス=労働集約型ビジネス
(売上を上げるには人手や一人ひとりの技術や経験が求められるビジネス)ではこの時代を生き抜くには難しくなってきたということです。

周辺の人口だってどんどん減っていきますしね。

加えて、世の中は働き方改革。

国がそれを先導して企業や弊社のような中小にも満たない零細企業にもそれを要求していきます。

であれば会社の考え方、会社のスタンスを大きく切り替える「いい機会」と足らえたのです。

カッコイイことを言うようですが私だってこのバカンス休暇がが吉と出るか凶と出るかはわかりません。

でもやってみて、ダメだったら軌道修正すればいいだけですから。

このコロナでさんざん打ちのめされたので、あとは立ち上がるだけです。

すでに今までのお客様にはご理解いただくよう鋭意努力中ではありますが、平日のディナー営業の廃止やメニューアイテムを絞るなど会社の体制も試行錯誤中で大変革中であります。

売上を追い求めずとも経営できないだろうか?

仕組みや効率、売り方を変えてお客様、働くスタッフ、そして運営する会社の三方良しの経営はできないだろうか?

お客様も大切ですが縁あってひとつ屋根の下で仕事する社員さんたちも大切なので。

そんなことを胸に今期の経営計画発表会の壇上にて、招待させて頂いた金融機関様の前で「今年はバカンス休暇を取り入れます!」と思いっきり宣言してしまったのでした。

それが去年の7月(2022年)のこと。

新年が明けて7月(2023年)には新しい決算期がやってまいります。それまでには実行しないと。。。

ということで、この2月にまずは10日間、店の営業を休止してバカンス休暇を付与するということになったわけです。

「みんな、大喜びだろーなー。。。。」と考えていましたら、休暇を始める前に一人の社員さんが「相談があるのです、、、、」

とやってまいりました。

話を聞くと「バカンス休暇は嬉しいけれど収入が減るのは困ります。」というもの。

すでに彼女は有給休暇は消化しているわけだし、規定以外の休日を取ると給与を減らされると思ったのでした。

私がバカンス休暇は規定の有給休暇以外の休日だということを伝えると顔がバラ色に。。。。(笑)

そりゃそうですよね。有給休暇 プラス バカンス休暇ですから、、、、、、、

それからというもの、今までに増してバカンス休暇前までに仕事を終わらせようと頑張るのでした。。。。

▲毎日こんな顔で仕事してほしいと思うのですが…

そんなことで来年度もこの制度、続けようと思っています。

(あっ、言っちゃった。。。。)

(続けれるかな〜)

(だいじょうぶかな〜)

な〜ンて思うわけですが。。。。。

いやいや、続けます!

今後もバカンス休暇だけでなく、スタッフみんなが笑顔になる施策を取り入れて、より魅力的な会社づくりにチャレンジしていきます!

(とは言うものの「さあ、どうやって売上を補填をするか。。。。。。。」)
と、そろばんを弾く私ですが、、、、、

10日後リフレッシュしたスタッフに会えるのが楽しみですね。

お客様、どうか弊社のわがままをお許しくださいませm(__)m

お付き合いありがとうございました。

YouTube動画毎日配信中です!

banner

この記事を書いた人

鈴木 賢司

昭和41年生まれ。地元高校を卒業し札幌東京へフレンチを志し修行。

家業である実家の飲食店に帰って20数年。気がつけば社長でした(笑)

詳しいプロフィールはこちら